絵本<からころ>と題字
2019年12月「上田普個展」の時に制作依頼があった<絵本の題字>
あれから約1年後。 その本の著者でおられるお客様から
「昨年12月に正田さんの美空間で上田さんと引き合わせて頂いた事をありがたく思っています。正田さんが、上田さんに本の題字をお願いしても大丈夫だと、また平仮名もとても綺麗な字ですよ、と言って下さって、とても心強かったことを覚えています。本当にその通りで上田さんはとても素敵な題字を書いて下さいました。」
と出版のお知らせと共に本を贈って頂きました。
制作過程で題字が「からころ」という平仮名になったと連絡があった時は、
鳴き声?何かの音? 下駄の「カランコロン」に似てるな?
どういう意味だろう?と完成を楽しみにしていました。
お客さまとのやりとりを上田よりメールで制作過程の報告を受けながら、私もとても勉強になりました。
上田の題字の制作過程は
沢山書きます。
何度も書くうちに手が文字の動きを憶え、自然に筆が動く様になり、フと出来上がるのを待つ様な製作の仕方をしています。
その間に何度も自我が出て来ては消し、出て来ては消しの繰り返しを行っている様な作業です。
130×60㎝の大きな紙をひろげソコに幾便と書きつつ、良いのが出て来るのを待つ。
今回は200枚以上
その中から選抜し、
更にお客様が題字を一週間眺めていると、
「シンプルな縦一行の題字の、歩く姿勢の美しさが見えてきました」
と決められたのが今回は紙の端の狭い中に書けたモノでした。
ずっと見ていたいと思うような字で、このように歩きたいなと初心に戻れるような「からころ」のように思われたそうです。
作品展からちょうど一年で発行となり、私も感慨深い想いで拝読させて頂きました。
本全体から音が聴こえてきそうな出雲の叙情的な光景が浮かび、九州の田舎で育った私は、郷愁懐かしく感じられました。
モノクロの絵と「からころ」の題字の表紙と挿画も文章に良く合いマットな質感が、とても素敵な大人が楽しめる本です。お手に取ってご覧になってみてください。